原文:
一 堂中の衆は、乳水のごとくに和合して、たがひに道業を一興すべし。いまは、しばらく賓主なりとも、のちにはながく佛祖なるべし。しかあればすなはち、おのおのともにあひがたきにあひて、をこなひがたきををこなふ、まことのおもひをわするることなかれ、これを佛祖の身心といふ。かならず佛となり祖となる。すでに家をはなれ、里をはなれ、雲をたのみ、水をたのむ。身をたすけ、道をたすけむこと、この衆の恩は父母にもすぐるべし。父母はしばらく生死のなかの親なり、この衆はながく佛道のともにてあるべし。
一 ありきを、このむべからず、たとひ切要には一月に一度をゆるす。むかしのひと、とをき山にすみ、はるかなる、はやしに、をこなふし。人事まれなるのみにあらず、萬縁ともにすつ、韜光晦跡せしこころをならふべし。いまはこれ頭燃をはらふときなり、このときをもて、いたずらに世縁にめぐらさむなげかざらめや、なげかざらめやは。無常たのみがたし、しらず露命いかなるみちのくさにかをちむ、まことにあはれむべし。
一 堂のうちにて、たとひ禪冊なりとも文字をみるべからず、堂にしては究理辨道すべし。明窓下にむかふては古教照心すべし。寸陰すつることなかれ、專一に功夫すべし。
一 おほよそ、よるも、ひるも、さらむところをば、堂主にしらすべし。ほしいままに、あそぶことなかれ。衆の規矩にかかはるべし、しらず今生のおはりにてもあるらむ。閑遊のなかにいのちをおはん、さだめてのちにくやしからん。