流転海47号

安泰寺文集・平成22年度


良樹 (安泰寺 三重県出身 38才 調理師)


今日は5時に起きて、明日から5日摂心でたっぷり坐禅なので自主暁天は止めて、インターネットでニュースを見て、コーヒーを飲みました。

今日は雨です。屋根から落ちる雨音を聞いていると、自分と雨音の境目がだんだん消えて行きます。ボーッと体を椅子に預けたまま、コーヒーが体の中に取り込まれていきます。自分の身体は自分のモノでもあり、自分のモノでもない。横で朝飯を作っている典坐さんが動いている音が聞こえます。自分が自分でもあり、他人が自分でもあるようにも、感じます。実体としての自分は一体、何なんだ?朝、目が覚めれば、あー今日も生きているんだと思います。朝飯はかぼちゃと大豆を食べました。俺の実体って、かぼちゃなのかも‥‥。

ここにいると、時間が大切に思えてきます。今日は放参ですが、100パーセント自分の自由時間ではありません。

今日やらねばならないこと、@一応、坐禅A料理の本を読んで色々な料理の種類やレシピの研究B英語の勉強C墓掃除D知客E電気柵のパトロールF禅に関する読書G掃除洗濯H般若心経を読むI木で仏像を彫りたいJ自分の机の上にコケを栽培したいK典座の準備、などなど。

いろいろやらねばならないこと、やりたいことは結構たくさんあり、時間は有効に使わなければなりません。

明日から5日摂心で、5日目にはJさんとBさんの得度式があり、私はこの日の典座で、この日は料理を用意します。お祝いなので赤飯とおはぎとお団子を作ろうかと考えています。その準備でさっきまで、小麦粉を練って、すりこ木で伸ばし餃子の皮を30枚と、団子を作るために、米をすり鉢ですって上新粉500gを作りました。2時間半位費やしました。その間は、無心です。頭の中は何も考えていません。皮を伸ばすことに成り切り、することに成り切る。自分がすりこ木に成り切り、すり鉢になり切りました。

ここでの生活では、自分と周りの環境との境目がどんどんあやふやになり、また一方で、自分のやりたいこと、意欲も湧いてきます。なんだか不思議な感じです。以前の私と変わったのか、変わらないのかも分かりません。ここで何を得て、何を失ったのか分かりません。下界に下りたときに何か気づくのかもしれません。時々はいよいよ山を下りようかなとも考える時もあります。今俺はここにいるべきなのかどうなのか、よく考えもします。ただ目の前のことを大切に集中して取り組むことが大事だとも思い、そうすることが、自分にとって素直で気持のいいことでもあると感じます。

今、原稿のギリギリ最終締切日の16時です。ここまで、何の予定稿もなく気の向くままにつらつらと書き進めてきました。これもまた、自分なのです。まだ思い浮かぶかとは思いますが、もう1時間半位このパソコンに向かい合っていますので、そろそろ筆をおきたいと思います。最後に業林の皆さんに感謝します。

さあ次はお風呂に入って、そのあとは何しょーっと‥‥。


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