流転海49号

安泰寺文集・平成24年度



卓史


いよいよ2012年もあと数時間となりました。
僕にとってはいくらきばっても出そうにないウンコをきばり続けるような時間でした。
僕の周りにいた人たちは僕が出そうもないウンコを出そうと便所にこもってきばり続けるのを
忍耐でもってひたすら見ているような毎日ではなかったかと思います。
この幾つになってもハラハラさせる、まったく気の置けない息子のことを、父は、母は、
どのような想いで眺めていたのでしょう。

2011年の12月末に、僕は妻と子(当時1歳11ヶ月)を伴い東京から生まれ故郷である兵庫の中山間地へ移住しました。
移住とは言いながらその内実は実家の離れでの居候ライフ。

東北関東大震災とそれによる原発事故を東京で体験した僕と妻はこれからをどう生きていくかを話し合った結果、
放射能の影響のなるべく少ない土地で子育てをしたい、という意見で一致し、とりあえず僕の故郷である兵庫県に
移住することを決めました。

今までの暮らしのスタイルではない方向へシフトするべきだ、
農の時代だ、
グローバリゼーションではなくてローカルへ、大量生産大量消費ではなくモノを大事に、
買うものは少なくしてなるべく自作する、、、、
「なんとかしなきゃ」
当時僕は確かにそう思ったし、現在もそういった内容の言論はよく耳にします。
でも僕は結局、僕の目指した方向にうまくシフトできませんでした。
生きていくにはお金が要ります。
僕はそれを自分の才覚で行えるほど大人ではありませんでした。

あーだこーだの末、僕は11月に園芸用品メーカーに就職しました。
外国で生産した商品を日本で安く販売する、思いっきりグローバリゼーションの上に成り立っている仕事です。
でも今の僕は、それで生活できている人がいるのであれば、べつになんでもええやん、ていうか立派なことやん、とすら思っています。

いや、そんなことはどうでもよくて、
もっと告白したいことがあるからこの文章を書いています。
それは今年の5月に上山した安泰寺にあってさえ向き合わざるをえなかった弱点。
僕は意識してしまった異性や同性を反射的に無視してしまう癖があり、
それが極端な形で人間関係に現れたときに、どうしてもその個人とも周囲ともギクシャクしてしまうのです。
僕はそれをまだ克服できていません。

「坐禅で平常心を鍛えて・・・」
いや、無理やし、、、

このなんとも稚拙な振る舞いをどうにかせねば、と焦るけど
あろうことか、新しく入った会社でも人間に過敏に反応する僕に周囲が不安を抱いている様子があり。。。
しかも営業職なので研修が終わり次第外に出ることになります。
前職での営業経験はないに等しいし。
それってやばくねー?
自分の対人関係への苦手意識、というかこのクセも含めて、克服しないとこの先の展開はないぞー! とまじめな危機感をもって臨むつもりですが、仕事やから失敗したらはずされるやろーな。

しかしそうそうネガティブなことばかりも言っていられません。
実は2月末に第二子が生まれる予定なのです。
美しく、楽しかった安泰寺から下山して授かった子、いってみれば案泰寺からのお土産?だと僕は確信しています。
あれこれ不安はありますが、働くことを通して家族を食わせ、人と、社会と関わることが今の僕にできることのようです。

最後になりましたが、5月の田植え時にお会いできた安泰寺の皆様、参禅者の皆様に感謝したいです。 早朝の研ぎ澄まされた坐禅の時間を体験できたこと、またあの場でお話できたことは、とにかく素敵なことでした。 2013年が皆様にとって良い一年となりますように。


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