流転海49号

安泰寺文集・平成24年度




    Antaiji

 私は満60歳でサラリーマン生活を終え、定年退職をしました。年月の経つのは早いものでもう3年が経過し、初めは、「毎日サンデー」という言葉がありますが何となく後ろめたい気分がありましたが、今ではこの生活に慣れ親しみ、学生時代に始めたアマチュア無線の趣味を復活し、毎日国内・国外の局長さんと交信し、またアンテナの製作やパソコンの整備などをして楽しんでいます。

 もちろん「坐禅」については毎日朝と昼に2回(45分X2回)を目指しており、1回の時もありますが頑張っています。私は山口市に在住しているときに瑠璃光寺にお世話になって始め、下関に転勤し、功山寺へ月2回通っています。その間、安泰寺を知ることになり、サラリーマン生活ですから、なかなか1週間の休暇も自由に取得することが難しい中、都合を付け、5月の連休や夏季休暇を当てて安泰寺の5日間接心も参禅しました。考えてみると坐禅との出会いは48歳の時でしたから、もう15年も続けていることになりますが、一向に「悟りの境地」に入ることはないようです。

 ところで表題のアマチュア無線についてですが、10年ひと昔と言うように30年もブランクがありましたので全くの「浦島太郎」の状態で、基本は変わりませんが、無線機・アンテナなどの設備も運用方法も変わり、年齢層も日本社会と同じく高齢化が進んでおり、また、モード(電波形式)が増えて、デジタル通信ができることでした。デジタルというのはテレビ放送と同じくアナログからデジタルであり、アマチュア無線の場合は一般的なパソコンで運用・管理ができます。そして何より優れていることは受信感度が飛躍的にアップし、通常の音声通信に較べ100倍とも1000倍と言われています。これにより今までDX(海外交信)はアマチュア無線家の上級者のみの世界であり、大掛かりな設備、技術、知識、情報そして何よりも上級免許の保持者であることが必須でした。ところがデジタル通信(現在私が取り組んでいるJT65というモード)の方法を導入することで、簡単な設備で可能になり、また無線資格も中級で十分であり、大幅に門戸が開放されました。私の無線設備、技術、知識でも可能と思い、早速取組み、専用のプログラムをパソコンに導入しました。ところが、まだそのプログラムは日本語化されてなく、無線機とパソコンとの接続などの設定、リンク・ソフトなどすべてが英語であり、それでもOM(アマチュア無線の先輩)からいろいろと多くのサポートを頂き、やっとのことで受信することができました。デジタル通信を取組み始めてから3か月が経ちました。その道は長く、その時点で大変な世界に踏み込んだと思いましたが、性格的にここで諦めてはならぬ、と考え、さらにいろいろと勉強し、昨年9月11日に初めて送信ができ、交信成功となりました。

 それから徐々にグレードアップし、本体のプログラムに加え、補助のプログラムの導入やさらに細かな調整をすることにより、初めはロシア、オーストラリア、アメリカ西海岸との交信が段々と交信距離が延長され、ドイツ、フランスなどヨーロッパまで交信範囲が拡大しました。そのころ、あるOMから海外交信に向いたアンテナの話を聞き、早速製作を開始し、釣竿の中にワイヤを通し、これをプラスチックのまな板にU字ボルトで止めて、作りました。苦労の甲斐があり、さらに南米のアルゼンチンやブラジル、南アフリカ連邦まで交信でき、私の電波も地球を一周することになりました。

 また、アマチュア無線では交信後QSLカードという交信証をお互いが発行します。国内では日本アマチュア無線連盟に加入するとQSLカードをまとめて発送、配達をしてくれます。だが、海外交信では様子が違い、多くの場合、電子メールのようにアマチュア無線専用のサーバー(アメリカなどに設置)があり、この組織に登録し、インターネットを介して交信証の交換をします。またまた、英語の世界、OMの説明を頼りに登録を完了すると自分宛ての交信証が返ってくるようになりました。今では朝、パソコンの電源を入れ、自分宛てのカードを確認するのが楽しみとなっています。

 このようにして海外交信を始めて、1年半が経ち、交信回数も1,000回を超え、海外のハムフレンドも700人以上となりました。考えてみると私たちの周りに世界各国からいろんな周波数、いろんなモードの電波が届いており、後は自分が無線機を設置し、アンテナを建て聞くことです。ここで一番大切なことは相手の周波数、モードに同調させることであり、同調するともうそこには遠く海外のハムフレンドの声が聞こえ、それに応答すれば交信となります。同じように坐禅においてもこの俗世間において、坐蒲の上に坐り、足を組み、手を組み、背筋を伸ばすと、即「仏」となり、仏の世界が広がっています。これからもアマチュア無線と坐禅をボチボチですが、続けて行きたいと考えております。(ちなみに私のコール・サインはJA4VKLです。)

 合掌


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