流転海07

安泰寺文集・平成19年度


佐織 (岡山県・二十五歳・カフェ経営)


もうすぐ生まれてくる「光一」へ


 光一、あなたを授かってから私は新たな感情を抱きました。「あなたを守りたい、そのために自分を大切にしたい」。まだまだ自分でも信じられません。光一はお腹の中にいるんですね。ときどき鏡に映った自分の姿を見て驚きます。光一はどんどん成長してるんだ。

 お腹の中で光一が始めて動き出したとき、その朝の感動は忘れられません。改めてあなたの存在に氣づかされました。自分の意思で手や足を動かしたり、ぐるぐると回転するのが伝わってきて、そのたびに私は嬉しくなります。

 家族のみんな、友達、親戚、近所のみんなが光一の誕生を心待ちにしています。アイン、あなたのお父さんの喜びはまた特別です。「おはよう」、「光ちゃん元気?」、仕事に行くときには「光ちゃん、行ってきます!」、家に帰ったら「光ちゃん、ただいまー」と、まだ顔の見えないあなたへの挨拶も忘れていません。アインの暖かい手を感じると、安心してか緊張してなのか、大人しくなっちゃうのはなんでかな。定期検査のために病院に行って、光一の様子を見るのがアインと私の楽しみです。1ヶ月に1度、今では2週間に1度行く度に、あなたの成長ぶりに驚かされ、嬉しくなります。先週は大きなかわいい顔を見せてくれました。五体満足で元氣ですね。

 あなたを授かってから私は、気分が悪くなるツワリの時期があったり、テニスやジョギングなどのスポーツはできなくなり、最近では歩くときもお腹が重くなったのを感じます。光一を氣にして、控えたことやできなくなったこともいくつかあります。だけど、そういう辛さや不自由さを体験できることも、私にとっては喜びのひとつです。

 あなたの力はすごい。あなたが私のお腹の中にいると聞いただけで、周りのみんなが幸せになります。あなたの様子を窺いに、遠くから友達が尋ねてきてくれます。近所のおじさん・おばさんは、私が散歩をしていると声をかけてきてくれて、体調を氣にしてくれ、果物や野菜を光一の分まで分けてくれます。私の母は、あなたの服や布団をとても楽しそうに作ってくれます。あなたが生まれたときには、大勢の人が押し掛けてきて、忙しくなることでしょう。あなたはお腹の中にいるだけで、みんなを幸せにしてくれ、みんなもあなたを幸せにしてくれます。

 あなたの顔をこの目で見るまで、不安を感じることもあります。だけど、今の私にできることは、体調に氣をつけて、栄養のあるものをおいしく食べて、ゆったりとした心持で楽しく生活することです。「光一の成長を見守りたい、そのためにも自分を大切にしたい。」少しずつ私の心にも母親としての感情が宿りました。私は、毎日幸せをいっぱい、いっぱい感じながら生活しています。

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