流転海48号

安泰寺文集・平成23年度


大貫俊彦


 二ヶ月間の座禅修行を終え、家族やら友人に帰宅の挨拶もそこそこにNさんのところに挨拶に伺う。
Nさんは、以前私の勤めていた施設の利用者さんで両手両足がない状態でパチンコやら競艇に電動車いすでバリバリ出かけて行くバイタリティーあふれる人です。
座禅をするのも初めてで、いきなり五日間の攝心を行ったのが運の尽きで、とにかく足が痛くどうしようもない状況が続く中思い出されたのがNさんの事です。
両手両足が実際に存在しない状態まさに達磨の状況に自分が置かれたらどういった心境になるのか?それに比べたら自分の足が痛いことなどと。
 こんな、凡夫丸出しの考えを常に思い浮かべながら最初の攝心を体の痛みと共に行っていたことを思い出しています。
 帰ってから、とりあえず今のところほぼ毎日座禅を行ってはいるのですが、朝早く私が座禅をしていると母が通りすがりに、驚いた様子で「大丈夫、座禅なんかしちゃって。頭おかしくなったんじゃない?」と私の背中越しに言う家庭環境の中座禅を行っていますが、以前澤木老師の本を読んだときに自分が座禅をしていたら拝まれたと言うのを思いだし当たり前の事ながら「俺は、まだまだだな」と心の中でつぶやいていました。
 ここで一句
「座禅して 拝まれてみたい いつの日か」
 字余り お粗末。
 安泰寺の環境がいかに座禅に適しているのかを毎日実感しながら、「あー今頃座禅してるなーとか作務の時間だなーとか、攝心が終わったからカレー食べてるなーとか」 思い浮かべながら来年の国家試験と大学のレポートに追われつつ日々を過ごしております。
 今年の冬は暖冬の様ですが、体調を崩さず皆さんがしっかり座禅される事を、神奈川の空より願っています。


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