流転海48号

安泰寺文集・平成23年度


高橋進


  今の日本は閉塞感が漂って暗いムードである。右肩上がりの経済は終焉し、過去の国民中流意識は遠い昔話になったようである。また、大量の国債発行はどのようにして決着を付けるのか、年金制度は今の契約が維持できるのか、などなど問題が山積みであり、全ては先送りで当面を繕っているようである。
  こうした中で静かなブームである「歩きお遍路」があるようだ。本屋にはこれに関する案内書や実録本や雑誌の特集が組まれている。私もこれらの本をいくつか持っている。そして山口県にも四国八十八ヶ所の縮小版があり、「秋穂八十八ヶ所」を回ったこともあります。また、福岡県にも篠栗さんという八十八ヶ所があり、これも二日をかけて回りました。
  今回は四国香川県小豆島のお遍路に挑戦しました。インターネットで調べると下記の説明であった。

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  小豆島八十八箇所霊場は、小豆島を巡る霊場である。遍路(へんろ)、島四国(しましこく)とも呼ばれる。一般に、遍路は四国八十八ヶ所の霊場とその巡礼者を指す場合が多いが、島四国の巡礼者も「お遍路さん」と呼ばれ親しまれている。旅程は四国八十八ヶ所が総延長一四〇〇kmにも及ぶのに対し、島四国は総距離百四十五km程度であり、手軽さから中高年の巡礼者、徒歩による巡礼者も多い。近年では道路が整備され車での巡礼が容易となっている。また、歩き遍路の一部をトレッキングコースとして小豆島旅行の中に組み入れたり、自転車やバイクで寺巡りをする若年の旅行者も見られる。
  山深い小豆島の地形を巡るルートは一部起伏に富んでおり、全旅程の高低差は五七〇mに及ぶ。徒歩での所要日数は約一週間が目安である。
  ベストシーズンは桜が見ごろとなる三~四月頃。「彼岸の島」とも呼ばれ、毎年参拝客が最も多くなる季節である。緑の濃くなる夏、木々の紅葉する秋も良い。ちなみに四国八十八箇所に倣い一札所に一種類ずつ八十八種類の桜が植えられている。

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  これを参考に、とにかく行動の無い「歩きお遍路」は無意味なので今年三月青春十八切符を購入し、最初の宿泊、小豆島の入り口にある土庄町に遍路宿を予約し、出発しました。朝四時四十分発宇部線/草江駅の鈍行列車に乗り、途中何度か乗り換え、岡山駅へ到着し、ここからバスを乗り継ぎフェリーで小豆島に上陸できました。
宿でお遍路のための案内書を購入し、当日は土庄町の中心部にあるお寺をお参りし、翌日から本格的に歩きお遍路が始まります。宿の女将さんからお接待として昼食のおにぎりを頂き、お茶を水筒に入れ、歩き始め、この島を右回りに島の北側を目指します。途中漁村の中のお寺は遍路道が生活道路となっており、何度も地元のお年寄りに聞きお参りします。海岸線の道は県道ですが、山越えになると農道を利用した遍路道となり、だれも歩いている人はなく、ただヒタスラ足を交互に出すのみである。でも村はずれにあるお寺でお茶とお菓子のお接待を受け、おばあさんと地元の話をし、休憩としました。歩き始めから二十kmを過ぎたころから、だんだんと足の指が痛くなり、足まめができそうでした。二泊目の宿(小部町)に予定時刻より早く到着し、山寺へもう「ひとがんばり」。
三日目目も朝七時に出発、県道を進むが分かれ道を間違い、大きくバックし峠道に入ります。峠の山道には急なところには手摺が設置してあり、助かります。またお遍路道の案内板も多くあり、迷うことはありません。ダムの上に出るとダムの急な階段を下り、本当に島遍路は舗装された県道、漁村の生活道路、農道や畦道、峠越えの山道、ダムの階段などがあり、迷うこと百回でしたが、考えてみると人生も同じであり、迷って迷って少しずつ前進するのでしょう。
  四日目は小豆町で島の南側になり、国道が通っています。でもお寺は岩山の崖を利用した絶壁にもあり、また、バスも通らない半島の岬にもあります。ただヒタスラ歩き、お寺で般若心経を唱えるのみである。
  春三月に三分の二を回り(四日間)、残り三分の一を秋十月に回りました(三日間)。春にはマイクロバスで参詣する人達で賑わったお寺参りも秋には静かで、爽やかな風に吹かれ、稲穂を見ながら、歩きます。今回は寒霞渓の周りにある山寺を中心に回り、逆回りに歩くと「歩きお遍路」の方にお会いし、ひととき情報交換や苦労話をして別れます。
最後は二十四の瞳の映画ロケ地跡の映画村を観光に入れ、終わりました。番外札所六ヶ所を含め公認霊場九十四ヶ所を回り切りました。本当に宿屋の女将さん、小さな堂庵でお婆ちゃんのお接待を受け、また、多くの地元の方に道案内を頂き、目には見えないが弘法大師(空海)さんのお陰で怪我無く、無事お参りすることができました。
  回り終えて感ずることは、この小豆島は「聖の島」であり、深く大師信仰が息づいている島だと思いました。感謝


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