流転海07

安泰寺文集・平成19年度


泰雲 (宝慶寺・二十八歳・逃げる人)


数日のうちに満月を迎える。先月の満月は宝慶寺で迎え、その前の満月は安泰寺を出た後、出雲で迎えた。もうすぐ僧堂に入って二ヶ月が経とうとする。徐々に慣れてきた頃だ。冬の空気が少しずつ感じられる。

 今考えると、安泰寺に居る頃は不満ばかり数えていた。それでは宝慶寺に居る今では自分は成長したのだろうか。宝慶寺の文集には、謙虚さと落ち着きを得られる様修行していく、と書いた。それは嘘では無い。しかし今の現状に満足しているか、と云うと、むしろ不満ばかり抱いている自分が居る。
 安泰寺から宝慶寺に移る時、堂頭さんに云われた事は決して比較をしないように、ということ。ここに居ると、安泰寺の良さがわかる。たが今ここでどう行動するかが問題で、ひとつひとつ目の前に在る出来事を丁寧にやっていけば道は開けていくと思う。
 下書きで、秋が深まるとともに迷いも深まると結んでこの文を終わりにしようと思ったが落ち着いた時に書くとまた異なって物事が観えてくる。日増しに焦りや疑問で頭が一杯になって窒息しそうになりながらも修行を続けられるのは、自分独りの力だけで無く私を支えてくれる皆のお陰と、ふと気付く。
 銀杏峰を眺む宝慶寺にて。合掌

十九年十月二十四日     泰雲拝

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