人間たちは狭い方を内側にして
 重宝して暮している
 酒や醤油や薬品などをそこに入れて
 人間らしく ちんまりと

 だが瓶というこの「物」たち自身には
 人間たちが外側のつもりでいる
 広い方の側が内側なのかも知れない

 そして「物」らしくそこに
 おおらかに入れているのかも知れない
 その肌で直接つつむようにして
 人間も地球も銀河も
 宇宙のすべての存在をすっぽりと

 どんなに小さな
 たとえばあの目薬の瓶たちでさえもが
 めいめいに ちんまりと
 ほかの瓶たちの中に坐り合ったままで

まど・みちお