学道用心集 講義@智源寺、2018年3月26日
第九 道(どう)に向って修行すべき事
右、学道の丈夫(じょうぶ)は、先(ま)づ須(すべか)らく道(どう)に向うの正(しょう)と不正(ふしょう)とを知るべきなり。
夫(そ)れ、釋雄調御(しゃくゆうちょうご)、菩提樹下(ぼだいじゅげ)に坐して、明星(みょうじょう)を見ることを得て、忽然(こつねん)として頓(とん)に無上乗(むじょうじょう)の道(どう)を悟る。其の悟る所の道は、声聞(しょうもん)、縁覚(えんがく)等の能(よ)く及ぶ所に非ず。
佛(ほとけ)能く自(みず)から悟りて、佛、佛に傳へて、今に断絶(だんぜつ)せず。其の悟を得る者は、豈(あ)に佛に非(あら)ざらんや。
所謂(いわゆる)道に向うとは、佛道の涯際(がいさい)を了ずるなり。佛道の様子(ようす)を明(あきら)むるなり。
佛道は人人(にんにん)の脚踉下(きゃくこんか)なり。道に礙(さ)えられて当處(とうじょ)に明了(めいりょう)し、悟(ご)に礙(さ)えられて当人(とうにん)円成(えんじょう)す。是(こ)れに因りて縦(たと)え十分(ぶん)の會(え)を挙(こ)すと雖も、猶(な)お一半(ぱん)の悟に落(おつ)るか。是れ則ち道に向うの風流なり。
而今(にこん)、学道の人は、未だ道の通塞(つうそく)を辨ぜず、強(し)いて見驗(けんげん)の有らんことを好む。
錯(あやま)らざるは阿誰(たれ)ぞ。
父を捨(す)て逃逝(とうぜい)し、宝を捨(す)てて令并(れいへい)す。長者(ちょうじゃ)の一子たりと雖も、久しく客作(かくさ)の賤人(せんにん)と作(な)る。良(まこと)に以(ゆえ)あり。
夫(そ)れ、學道の者は、道(どう)に礙(さ)えらるることを求む。
道に礙えらるるとは、悟跡(ごしゃく)を忘(ぼう)ずるなり。
佛道を修行する者は、先づ須(すべか)らく佛道を信ずべし。
佛道を信ずる者は、須(すべか)らく自己本(もと)道中に在りて、迷惑せず、妄想せず、顛倒(てんどう)せず、増減(ぞうげん)なく、誤謬(ごびゅう)なしということを信ずべし。是(かく)の如くの信を生じ、是の如くの道を明め、依(よ)って之を行ず、乃ち學道の本基(ほんき)なり。
其の風規(ふうき)たる、意根(いこん)を坐断(ざだん)して、知解(ちげ)の路(みち)に向(むか)わざらしむるなり。
是れ乃ち初心(しょしん)を誘引(ゆういん)するの方便(ほうべん)なり。
其の後(のち)、身心を脱落(だつらく)し、迷悟を放下(ほうげ)す、第二の様子なり。
大凡(おおよ)そ自己佛道に在りと信ずるの人、最も得難きなり。
若し正(まさ)しく道に在りと信ぜば、自然(じねん)に大道の通塞(つうそく)を了じ、迷悟の職由(しょくゆう)を知らん。
人試みに意根(いこん)を坐断せよ、十が八九は、忽然(こつねん)として見道することを得ん。
第十 直下承当の事
右、身心を決択(けつちゃく)するに、自(おのず)から両般(りょうはん)あり、参師聞法(さんしもんぽう)と、功夫坐禅(くふうざぜん)となり。
聞法は心識を遊化(ゆげ)し、坐禅は行證を左右にす。
是を以て佛道に入るに、尚ほ一を捨てて承当すべからず。
夫、人は皆な身心あり、作は必ず強弱あり。勇猛と昧劣となり。也(ま)たは動、也たは容、此の身心を以て、直に佛を證す、是れ承当なり。所謂従来の身心を回転せず、但だ他の證に随い去るを、直下(じきげ)と名ずくるなり、承当と名ずくるなり。唯だ他に随い去る、所以(ゆえ)に旧見に非ざるなり。
唯だ承当し去る、所以に新巣に非ざるなり。
『正法眼蔵・生死』
ただわが身をも心をもはなちわすれて、仏のいへになげいれて、仏のかたよりおこなわれて、これにしたがひもてゆくときちからをもいれず、こころをもつひやさずして、生死をはなれ仏となる。たれの人か、こころにとどこほるべき。
仏となるにいとやすきみちあり。
もろもろの悪をつくらず、生死に著するこころなく、一切衆生のためにあはれみふかくして、かみをうやまひ、しもをあはれみ、よろづをいとうこころなく、ねがふこころなくて、心におもうことなく、うれうることなき、これを仏となづく。またほかにたづぬることなかれ。
初梅&本の紹介:南直哉著『超越と実存』、2018年3月15日・16日
現代日本において、仏教が様々な方々によって、どう解釈されているか? 既成仏教とは全く違った、斬新な仏教理解に興味を持つ方には、曽我逸郎さんのサイトをお勧めします:
私たちはみんな無我
月を差す指はどれか?
曽我逸郎さんは批判仏教の影響で、自らの考え方を一新させ、その回心・改新・開進の過程を綴っている方です。それぞれのサイトの「意見交換」コーナーでは、私とのやり取りも載っています。『超越と実存』などよりははるかに面白いし、勉強になります。
「正法眼蔵・行持」の話、2018年2月27日
梁の普通よりのち、なほ西天にゆくものあり、それなにのためぞ。至愚のはなはだしきなり。悪業のひくによりて、他国に足令跰するなり。歩歩に謗法の邪路におもむく、歩歩に親父の家郷を逃逝す、なんだち西天にいたりてなんの所得かある。ただ山水に辛苦するのみなり。西天の東来する宗旨を学せずは、佛法の東漸をあきらめざるによりて、いたづらに西天に迷路するなり。佛法をもとむる名称ありといへども、佛法をもとむる道念なきによりて、西天にしても正師にあはず、いたづらに論師経師にのみあへり。そのゆゑは、正師は西天にも現在せれども、正法をもとむる正心なきによりて、正法なんだちが手にいらざるなり。西天にいたりて正師をみたるといふたれか、その人いまだきこえざるなり。もし正師にあはば、いくそばくの名称をも自称せん。なきによりて自称いまだあらず。
また真丹国にも、祖師西来よりのち、経論に倚解して、正法をとぶらはざる僧侶おほし。これ経論を披閲すといへども経論の旨趣にくらし。この黒業は今日の業力のみにあらず、宿生の悪業力なり。今生つひに如来の真訣をきかず、如来の正法をみず、如来の面授にてらされず、如来の佛心を使用せず、諸佛の家風をきかざる、かなしむべき一生ならん。隋唐宋の諸代、かくのごときのたぐひおほし、ただ宿殖般若の種子ある人は、不期に入門せるも、あるは算沙の業を解脱して、祖師の遠孫となれりしは、ともに利根の機なり、上上の機なり、正人の正種なり。愚蒙のやから、ひさしく経論の草庵に止宿するのみなり。しかあるに、かくのごとくの嶮難あるさかひを辞せずといはず、初祖西来する玄風、いまなほあふぐところに、われらが臭皮袋を、をしんでつひになににかせん。
香厳禅師いはく、計千方只為身、不知身是筭中塵。
莫言白髪無言語、此是黄泉伝語人。
(百計千方只身の為なり、知らず、身は是れ筭の中の塵なること。言ふこと莫れ白髪に言語無しと、此れは是れ黄泉伝語の人なり。)
しかあればすなはち、をしむにたとひ百計千方をもてすといふとも、つひにはこれ筭中一堆の塵と化するものなり。いはんやいたづらに小国の王民につかはれて、東西に馳走いるあひだ、千辛万苦いくばくの身心をかくるしむる。義によりては身命をかろくす、殉死の礼わすれざるがごし。恩につかはるる前途、ただ暗頭の雲霧なり。小臣につかはれ、民間に身命をすつるもの、むかしよりおほし。をしむべき人身なり、道器となりぬべきゆゑに。いま正法にあふ、百千恆沙の身命をすてても正法を参学すべし。いたづらなる小人と、広大深遠の佛法と、いづれのためにか身命をすつべき。賢不肖ともに進退にわづらふべからざるものなり。
冬安居の報告&春以降の講演の告知、2018年2月16日
3月
26日(月) 京都府 宮津市 智源寺 13:30~15:00: 「学道用心集」(最終回)。
4月
1日(日) 群馬県 安中市 長伝寺で講演。
5日(木) 東京都 日本橋 Kandy 15:00~17:00 “Sex&Money” 藤田一照師と「性」について対談。申し込み:kandyアッとvkj.co.jp 件名:「法話会」
6日(金) 東京都 南青山 vedaで、19:30~21:00 ワークショップ。
7日(土) 東京都 南青山 vedaで、6:45~7:45 「ただ坐る」。
7日(土) 東京都 新宿 朝日カルチャー新宿教室 17:00~18:30 坐禅 19:00~20:30 永井均先生と対話。
8日(日) 神奈川県 鎌倉市 9:15~11:45 「いのちの学校」。
8日(日) 神奈川県 藤沢市 朝日カルチャー湘南教室 13:00~14:30 講義。
14日(土)兵庫県 養父市 永源寺 14:00~ 講演。
15日(日)鳥取市 NHK文化センター アクティビル7階 10:30~12:00 講演「迷いながら どう生きるか」。
5月
18日(金) 神戸経済同友会の総会で講演。
6月
9日(土) 兵庫県 豊岡市 国際交流協会 13:00~ ウィルチコ・フロリアン神主と講演。
10日(日) 大阪市 朝日カルチャーセンター中之島教室 11:00~12:30 講義 13:15~14:45 椅子禅。
17日(日) 名古屋市 朝日カルチャーセンター名古屋教室 13:00~14:30 講義 15:00~16:30 椅子禅。
23・24日(土・日) 新温泉町 西光寺 永代経で講演(三回)。
7月
12日(木) 東京都 日本橋 Kandyで、15:00~17:00 “Sex&Money” 藤田一照師と「お金」について対談。申し込み:kandyアッとvkj.co.jp 件名:「法話会」
19・20日(木・金) 長崎県 佐世保市 洪徳寺の大般若会で講演(二回)。
21日(土) 東京都 中野サンプラザ 日本仏教鑽仰会 で講演:13:30~15:30 「親鸞と道元」
9月
23日(日) 兵庫県 芦屋市 仏教会館 で 10:00 ~ 12:00 公開仏教講座。
10月
3日(水) 徳島県 18:30 ~ 20:30 「禅をきく会」で講演。
5・6・7日 新潟県下越地域(新潟市・胎内市・五泉市)の各会場で「巡回仏教講演会」。
18日(木) 東京都 日本橋 Kandyで、15:00~17:00 “Sex&Money” 藤田一照師と「死」について対談。申し込み:kandyアッとvkj.co.jp 件名:「法話会」
30日(火) 鳥取県 米子市 総泉寺 9:30 ~ 15:30「禅の集い」で講師。
11月
6日(火) 長野県 北信越管区教化センター布教研修会で講演。
8日(木) 兵庫県養父市 とが山学園で 10:00~11:30 講演。
21日(水) 兵庫県危険物安全協会会長研修会で講演。
25日(日) 福井県小浜市国際交流協会マリンカの会で講演。